第79回 王妃シリーズ①ポルトガルに大きな影響を与えたイギリス出身の王妃

王妃シリーズ①
ポルトガルに大きな影響を与えたイギリス出身の王妃

[2019.1.11]

2019年が始まりました!
独立して4年目を迎える今年は、これまでセーブしてきた事に挑戦し可能性を広げていきたいと思います。もちろん私の場合はその全てがポルトガルに繋がっているのですが、行ったことない土地や歴史に触れたり、まだ食べたことのない郷土料理を食べたり学んだり、仕事では新しい分野に取り組んだり・・・と、色々な想いを巡らせながら年間計画を立てました。
 
その中の挑戦の1つとして、こちらのコラムで「王妃シリーズ」と題してポルトガル王妃やヨーロッパの王室に嫁いだポルトガル人の王女を中心にご紹介していきたいと思います。煌びやかで華やかな世界を思わせるヨーロッパの王室ですが、私たちが想像できる範囲をはるかに超えた苦労が彼女たちにはあった事でしょう。そんな環境の中で、陰で王室を支え時には歴史を動かした、強く生きた女性たちを紹介していきたいと思います。
 
ポルトガルは歴史的に見てイギリスと深い交友関係を持っています。ポルトの特産品として有名なポートワイン。多くのワイナリーにイギリス系の名前が付けられていることからも、両国の深い歴史を感じることができます。ポルトガルが隣国のスペインと争うことが多かったことから、スペインと良い関係を築いていたフランスよりも、その対極にあったイギリスと同盟を組むことは自然のことでした。そして、その関係を確固たるものとするために行われたのが戦略結婚。両国のお姫様たちは、生まれた頃からその運命を背負っていたのです。
 
14世紀のポルトガル。1385年にスペインの侵略を打破したアルジュバロータの戦いで勝利し王の座についたジョアン1世は、1387年にイギリスのランカスター家の王女フィリッパを王妃として迎え入れます。これは1373年に結ばれた英葡永久同盟(Anglo-Portuguese Alliance)を強めるために決められた結婚でした。この同盟は現在でも続き、世界最古の同盟とも言われています。20世紀に起きた世界大戦の際には何度もその力を発揮しました。
聡明な王妃として慕われたフィリパ・デ・ランカストレ
ジョアン1世とフィリッパ王妃の結婚式は、ポルト大聖堂 (Sé do Porto)で行われました。そして結婚式後も2週間にわたりお祭りが続いたそうです。この時の様子は、ポルトの有名な鉄道駅サン・ベントのアズレージョに描かれています。

2人の結婚式の様子がサン・ベント駅の入口から見て右手の上部に描かれています。

13世紀に完成したポルト大聖堂

フィリッパ王妃の祖父はイングランド王エドワード3世。イギリスのランカスター家の長女として非常に高いレベルの教育を受けて育ちました。ラテン語・英語・フランス語に精通し、詩を読むことも得意としていました。若くして母親を亡くし、弟や妹たちのことを世話することもあったのかもしれません。とても寛大で、信心深く、敬虔な態度が人々の心を掴んでいたと言われています。
 
27歳で嫁ぐことになったフィリッパ王妃。当時としては遅い結婚であり国同士が決めた戦略結婚でしたが、2歳年上のジョアン1世との仲はとても良好でした。夫が決めたことを尊重し陰で支え、必要があればどんなに遠い場所でも一緒に出掛けたそうです。
ある日、ジョアン1世が女官にキスをしているとこをフィリッパ王妃が見つけてしまいます。ジョアン1世は、「善意でキスをしただけ」と説明したので、王妃は責めることをせず、黙っていたそうです。しかし、使用人たちはそのことをうるさく噂しました。困ったジョアン1世は、シントラの宮殿に「カササギの間」を作りました。天井に136羽のカササギを描き、その口元からは“善意で”という言葉、足にはフィリッパ王妃の生まれランカスター家の紋章である薔薇をもたせました。これは、よく鳴くカササギを136人の使用人にたとえ、王妃への誠意ある気持ちをユーモアたっぷりに伝えたと言われています。このことからも、王が王妃を大事にしていたことが感じられます。
 
ジョアン1世とフィリッパ王妃の間には9人の子供を生まれました。フィリッパ王妃は、イギリス式の教育も取り入れ、優秀で立派な人物へと育て上げました。その後のポルトガルの黄金時代(大航海時代)を築いたドゥアルテ1世やペドロ王子、エンリケ航海王子、フェルナンド王子も、彼らの子供です。
エンリケ航海王子を先頭に偉人が並ぶ発見のモニュメント。フィリッパ王妃も後ろから息子たちを支える様に祈りを捧げています。
当時の王妃としては珍しく、航海術や地理学にも精通し、これは息子たちに影響を及ぼしました。聡明な妻であり母であるフィリッパ王妃は、ポルトガル宮廷の中心人物として影響力を持ちました。ポルトガルやイングラントの貴族の結婚話をまとめることもあったようです。1414年、ジョアン1世と一緒にモロッコのセウタ侵略に参戦した三男のエンリケ航海王子は、セウタを戦略することで、キリスト教を振興するだけではなくアフリカへの開拓、さらにその先のインド航路開拓への野望を抱くようになります。当時、アフリカで採れた金や香辛料はイスラム商人を介してしか手に入りませんでした。彼らを介することなく金や香辛料を手に入れようと考えたのです。これは、航海術に詳しかった母・フィリッパ王妃から受けた影響だったとも言われています。
 
セウタ侵略が成し遂げられる数カ月前に、フィリッパ王妃はペストにかかり亡くなります。56歳でした。その時、死の床で王子たちを集め、それぞれに剣を与え「勇ましく戦っておいで」と言って送り出したそうです。
 
ジョアン1世はフィリッパ王妃亡き後も彼女が残した立派な息子たちと共に、ポルトガルの黄金時代を築いていきました。1433年に亡くなってから現在に至るまで、自身が建てたバターリャ修道院に、フィリッパ王妃と並んで眠っています。

バターリャ修道院にある2人のお墓。

ポルトガルに大きな影響を与えたイギリスから来た王妃。外国から嫁いだにもかかわらず、聡明さと敬虔さで王を支え、立派な子供を育てあげたフィリッパ王妃。時代を越えて今でも多くの女性が憧れることだと思います。彼女がいなかったらポルトガルの歴史は全然違ったことでしょう。
 
ジョアン1世が勝利したポルトガルの運命をかけた「アルジュバロータの戦い」についてはこちら
 
それでは、また次回!
 
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著者プロフィール

19歳の時にポルトガルに出会いすっかり虜になる。大学卒業後、日本で貿易実務、ロジスティクス、マーケティングの経験を積むが、日本とポルトガルをビジネスで繋ぎたいという気持ちが大きくなり渡ポすることを決意。ポルトガルに1年半留学しMBAを取得。在学中、現地企業やビジネスパーソンとの幅広いコネクションを築く。

現在はポルトガルジュエリーのブランド「フィリグラーナ・コン・アモール(Filigrana com Amor)」を立ち上げ、インポーターとして活動。日本とポルトガルを行き来しながら両国の情報を発信し、人・ビジネス間の交流が活発化するよう邁進中。

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