ポルトガルの運命を決めた、アルジュバロータの戦い
[2018.11.27]
今日は、ポルトガルの歴史の中で正に『その時歴史は動いた』と言える出来事を紹介したいと思います。
それが、アルジュバロータの戦い(Batalha de Aljubarrota)です。
戦いの舞台になった場所はまだ存在しています。
600年以上前のことです。当時、ヨーロッパではイギリスとフランスの百年戦争により、不安定な状態が続いていました。そんな中、ポルトガルの王位継承にも問題が発生します。イネスとの愛を誓ったことで有名な王様ペドロ1世の息子、フェルナンド1世(母はペドロ1世の正妻のコンスタンサ)は、ペドロ1世が亡くなった1367年に即位しました。母がカスティーリャ(今のスペイン中部あたり)出身のため、カスティーリャの王位継承権も主張しました。フェルナンド1世は幾度もカスティーリャへ侵攻しましたがいずれも敗北しています。フェルナンド1世に、成人した息子がいなかったことから、彼の死後は娘のベアトリスが王位を継承しますが、カスティーリャ王国との連携を強め更なる力を強めたい母レオノールにより、ベアトリスはカスティーリャ王ファン1世と11歳の時に戦略結婚をすることになります。
これにより、ファン1世がポルトガル領土の支配と王位継承を目論み始めます。もちろんポルトガル国内では貴族をはじめ多くの国民がカスティーリャ王国の支配下になることを恐れ嫌っていました。その中で強い支持を集めたのが、若くしてポルトガルの騎士修道会「アヴィス騎士団」の総長を務めていたジョアンでした。彼は、ペドロ1世の息子です。イネスに永遠の愛を誓ったペドロ1世ですが、イネスが殺されてしまった後はテレサ・ロレンソという女性を妾妃にしていました。ジョアンはこのテレサとの間の子供です。
フェルナンド1世の娘ベアトリスの王位を認めないポルトガルの貴族たちにより、1385年のコルテス(身分制議会)でジョアン1世としてポルトガル王に選出されました。ここから彼の実力が発揮されることになります。
1385年8月14日にカスティーリャ王ファン1世が、北から攻めていることを受け、ジョアン1世と元帥ヌノ・アルヴァレス・ペレイラは、首都リスボンが侵略される前に戦わなければいけないと考えました。そこで戦場として選ばれた地がアルジュバロータです。リスボンから100㎞ほど北上した場所にあります。
3万人規模のカスティーリャ王国の軍隊に対し、規模の小さかったジョアン1世の軍隊ですが、小川と急な坂がある戦場で土地の形状を利用した戦略を取ります。真夏の暑い日だったそうです。小回りが利き、動きも少なかったジョアン1世の軍隊だからこそ、大群ながら疲れ果ててしまっていたファン1世の軍隊を追撃し勝利することができました。これが、まさに『その時歴史が動いた』です。
難しいと思われていた戦いに勝利したことをジョアン1世は聖母マリアにとても感謝したと言われています。その気持ちを表すため、聖母マリア修道院を建てることにしました。修道院建設に選んだ場所は「戦い」を意味する「バターリャ」と呼ばれ、現在に至るまでこの町はバターリャとして発展しています。
通称バターリャ修道院と呼ばれ親しまれています。大迫力!
なかでも一番目立つのは、大航海時代に発展した海のモチーフを多用したマヌエル様式です。とても凝った造りで、当時の指導者や職人のこだわりを感じずにはいられません。日本でもそうですが、長い年月をかけじっくり造られたもの、限界までこだわった作品は、どんな時代にもそれに触れる人々の心を掴むものだと思います。気を休めることも大切ですが、手を抜かないことも大事ですね。
究極まで凝った細工が素晴らしいマヌエル様式。
今でも未完の礼拝堂。見上げると青空。
フィリッパ王妃は、リスボンの観光スポット「発見のモニュメント」に唯一の女性として並んでいます。
ジョアン1世がアルジュバロータの戦いで勝利することにより、現在のポルトガルの礎を築いたと言っても過言ではありません。こうして歴史を知ると、ポルトガル観光もより楽しくなるはずです!
ペドロ1世とイネスが眠るアルコバッサについてはこちら。
それでは、また次回!
著者プロフィール
19歳の時にポルトガルに出会いすっかり虜になる。大学卒業後、日本で貿易実務、ロジスティクス、マーケティングの経験を積むが、日本とポルトガルをビジネスで繋ぎたいという気持ちが大きくなり渡ポすることを決意。ポルトガルに1年半留学しMBAを取得。在学中、現地企業やビジネスパーソンとの幅広いコネクションを築く。
現在はポルトガルジュエリーのブランド「フィリグラーナ・コン・アモール(Filigrana com Amor)」を立ち上げ、インポーターとして活動。日本とポルトガルを行き来しながら両国の情報を発信し、人・ビジネス間の交流が活発化するよう邁進中。
Web: http://www.shop.filigranacomamor.com/
www.eleuteriojewels.com
E-mail:s.kiriyama@worldfiligranakk.com
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