第70回 愛を貫いたペドロとイネスが眠るアルコバッサ

愛を貫いたペドロとイネスが眠るアルコバッサ

[2018.8.17]

先日、ポルトガル中部にある町アルコバッサを訪れました。とても小さい町ですが、重要な建築物であるアルコバッサ修道院(Mosteiro de Santa Maria de Alcobaça)があることで知られています。この修道院は1989年に世界遺産として指定されました。

町の中心に堂々と佇むその姿に感動します。

修道院はポルトガル初代王アフォンソ1世の命により1178年に建築が始められ、1240年までに教会と修道院の一部が完成しました。現在の教会の正面は18世紀に建設されたものですが、教会の内部は12世紀~13世紀当初のままです。この教会はポルトガルの初めてのシトー派(シトー修道会)の教会だったそうです。というのも、初代王の時代に行ったレコンキスタ(イスラム教徒から国土を取り戻す運動)にシトー派が協力してくれたため、その感謝の意を示し建てられたからです。シトー派とはフランス・シトーに設立したシトー修道院が発祥で、煌びやかな装飾、彫刻、美術での教示を禁じました。そのため、この教会内はとても質素ですっきりしています。
質素でありながら美しい内装。高さは20mもあります。
そしてこの教会の中には、ポルトガルの悲恋物語として知られるペドロ王とその妻イネスのお墓があります。

それは14世紀のお話しです。 ポルトガル王子ペドロは、お隣の国カスティーリャ王国との絆を深めるため王族の娘コンスタンサと1339年に結婚しましたが、その際コンスタンサの侍女として一緒に来たイネスに恋をします。正妻コンスタンサとの間に2男1女が生まれますが、イネスへの想いは募るばかりでした。コンスタンサが若くして亡くなると、2人の関係は公然となり、ペドロとイネスの間にも4人の子供が生まれました。ペドロの父親であるポルトガル王アフォンソ4世は、カスティーリャ王国との関係が悪化することを恐れ、ペドロを正統な相手と再婚させようとしましたが、ペドロはイネス以外とは結婚しないと断固拒否しました。正妻を差し置いて王子の愛人となったイネスを良く思う人はあまり多くいませんでした。また彼女の周りにはカスティーリャ王国からの逃亡貴族が集まり、両国の友好関係に亀裂が入ることになります。これらの状況を恐れたポルトガル王とその側近は、イネスを宮殿から追い出しましたが、それでも二人の関係は続いていました。

最終手段とし、王は3人の家臣にイネスを処刑するように命じます。とうとうイネスはコインブラのサンタ・クララ修道院にて捕らえられ、首を切られ殺されてしまいます。この事実を聞いたペドロは怒り、父親との関係も悪化します。イネスの死から2年が経ち、父アフォンソ4世が亡くなると、ペドロはポルトガル王ペドロ1世として王位に就きます。するとペドロは、自分はイネスと結婚していたと主張し、イネスを王妃として認めさせました。さらにイネスのお墓を掘り起こし、(既に白骨化していたであろう)イネスを王妃の席に座らせ、イネスの手に接吻するよう強制したそうです。そしてイネスを殺害した家臣も処刑されてしまいました。

ペドロは自分が死んだら、自分のお棺とイネスのお棺をお互いの足が向かい合うように並べてほしいと言い残しました。それは、最後の審判で死者が生き返る時、自分たち2人も起き上がってすぐに顔が見えるように、と考えたペドロの想いからでした。彼の遺言は今でも守られており、2人のお棺はアルコバッサ修道院にその通り安置されています。

ペドロ1世のお墓

ペドロ1世のお墓には素晴らしい彫刻がほどこされています。シトー派の修道院の中で、異質な程の美しい造りになっています。
美しいバラ窓の様な彫刻ですが、こちらにはペドロとイネスの幸せだった頃からイネスが捕らえられ殺害されるまでが表現されています。

ペドロ1世

イネス

あちら側にペドロ1世のお墓が見えます。
お墓の彫刻はところどころ壊れていますが、これはのちにナポレオン軍が侵攻してきた時(19世紀のころ)破壊されてしまったそうです。いつか修復されることを願います。

ここまでは教会ですが、修道院も見学可能(有料)です。12世紀に建設が始まってから、何度か増築され、現在の姿になったのは18世紀の頃です。

美しい回廊

食堂にあるプレゼン席。ここで代表者が話をしたようです。映画に出てきそうです。

驚くほど長い煙突があるキッチン。たくさんの人が修道院で暮らしていたことが分かります。このアズレージョ、とても素敵です。

修道院を上から眺めると、その大きさに驚きます。

ちなみに、アルコ川とバッサ川が流れ交わる場所という意味で、アルコバッサと呼ばれるようになったそうです。

アルコ川

修道院のあるところにはポルトガルの黄色いお菓子もあります。

アルコバッサの旅、いかがでしたか。

戦略結婚が多かった中世の時代に自分たちの気持ちを貫いた男女の愛。多くの人の利害が複雑に交わり、その中でも強く生きていかないといけない。そんな二人が残したストーリーと遺跡を今も目の前で見ることができます。

アルコバッサへはリスボンからバスで2時間強です。

それでは、また次回!
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著者プロフィール

19歳の時にポルトガルに出会いすっかり虜になる。大学卒業後、日本で貿易実務、ロジスティクス、マーケティングの経験を積むが、日本とポルトガルをビジネスで繋ぎたいという気持ちが大きくなり渡ポすることを決意。ポルトガルに1年半留学しMBAを取得。在学中、現地企業やビジネスパーソンとの幅広いコネクションを築く。

現在はポルトガルジュエリーのブランド「フィリグラーナ・コン・アモール(Filigrana com Amor)」を立ち上げ、インポーターとして活動。日本とポルトガルを行き来しながら両国の情報を発信し、人・ビジネス間の交流が活発化するよう邁進中。

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