昔から愛されてきたポルトガルのスープ
[2017.12.20]
ポルトガルの食卓に欠かせない食べ物。
パンやジャガイモ、米など、これまでいくつか紹介してきました。どれも美味しくて大好きですが、実はまだ紹介していない食べ物があります。
それが、スープ(Sopa)です。
日本人はお味噌汁をよく食べますが、同じようにポルトガル人もスープをよく食べています。その消費量はヨーロッパの中でも多い方とのこと。多くの国でスープは古くから人々に親しまれてきた食べ物なので、1杯のカップの中に国民の食生活が詰まっているように感じられます。
ポルトガルのスープには野菜がたっぷり入っています。
ほとんどの場合、ブレンダーを使って野菜の形状が分からないくらいペースト状にします。温度は人肌くらいなので、日本人にはちょっとぬるいぐらいです。でも、食べているうちにほっこり温かい気持ちにさせてくれます。
具のベースとなる食材はほとんどの場合、ジャガイモ、ニンジン、タマネギ、ニンニク、オリーブオイル、塩で作られます。レシピによって量を調整し、主役となる具材を加えると、不思議とポルトガルスープの味が出来上がります!
代表的なスープ カルド・ヴェルデ(Caldo Verde)
このカルド・ヴェルデは、先程の基本材料に細く刻んだケールとチョリソー数切れを入れたスープです。元々はポルトガルの北部でお祝い事の時に食べられていたそうですが、今ではポルトガル全土で食べられています。スーパーのお惣菜コーナーでもよく見かけます。
ポルトガルでもお湯を入れるだけで出来るインスタントスープもありますが、あまり人気はなさそうです。マクドナルドなどのファストフードでも、わりとしっかりとした味のスープが提供されています。
フードコートでも、野菜をペースト状にしたスープがメニューにあります。たっぷり入れてくれるのもポルトガルならでは。
写真の左側は、メニューでもよく見かける「野菜スープ(Sopa de legumes)」。ベースとなる材料の配分が、各家庭やレストランにより違いますが、わりとジャガイモの味が主流となるスープが多いです。
写真の右側は、こちらも伝統的な「石のスープ(Sopa da pedra)」。
最初、この名前を聞いた時は、「スープの中に石が入っているの?それとも石焼なの?」と色々と考えてしまいましたが、こちらは具沢山のスープです。
「石のスープ」と呼ばれるようになったのには、実はこんな話があります。
昔々、アルメイリン(Almeirim)というリバテージョ地方の町に巡礼中の修道士がいました。彼はお腹が空いていましたがお金がなく、食べるものもありませんでした。「どうにか食べ物にありつけないだろうか…」そんなことを思いながら歩いていると、道の先に明かりの付いた家が見えてきました。
彼はその家に近づきドアを叩きました。「巡礼中なのですが、食べるものがないのです。少しだけ食べ物を恵んでくれませんか」と。すると、家の中から夫婦が出てきました。そして、「うちも余裕がないのだよ。よそへ行ってくれないか」と門前払いされてしまいました。
困った修道士がふと目を下にやると、そこには手のひらサイズの石が落ちていました。
「そうだ!」とひらめいた修道士。もう一度、家をノックしました。
「私は、美味しいスープを作れる不思議な石を持っています。どうか鍋と水だけ貸してもらえませんか」
「石だけでスープが作れるだって?」この言葉に興味津々になった夫婦は、修道士に鍋と水を渡しました。石を鍋に入れ茹で始めてしばらくすると、修道士はこう言いました。「この石は少し古くなっているようです。塩を加えれば味を濃く出来るのですが」すると、夫婦は塩を彼に与えました。そしてまた少しすると修道士は「少しの野菜とお肉があれば、さらに美味しくなるでしょう」と言いました。こうして夫婦は修道士に次々と食材を渡したのです。
最終的には具沢山な美味しいスープが出来上がり、夫婦はとても感激します。「なんて美味しいスープなのだろう!」と。
修道士はお腹いっぱいスープを食べ、最後にこう言いました。「ありがとうございました。少しばかりですが、この石を良かったらお持ちください」と。夫婦は喜んで修道士を送り出しました。その後、この石を使って夫婦はスープを作り、それが今の具沢山スープになったそうです。
お腹が空いた修道士は、一度は断られてしまうものの、どうにか争うことなく食糧を手に入れることができました。そして、食料を渡したくなかったはずの夫婦の心も、結果的には温かくなったのです。そんなメッセージが込められたポルトガルに伝わる伝説です。
ちなみに実際の石のスープには、石は入っていないので安心してくださいね。
日本語でも、絵本のような動画がありました!可愛いので是非ご覧ください。
えほんキッズ『石のスープ』より
ポルトガルのカフェなどでは、お昼に定食メニュー(Prato do dia)を頼むとスープ付きになることが多いです。又は、サラダかスープのどちらかを選べることもあります。
こちらはメインとスープのメニュー
メインの量が十分にありますし、日本のランチメニューに付くスープより大きいサイズなので、ポルトガル人でもスープを頼まない人が結構多いです。
ポルトガルのスープは腹持ちが良いので、レストランで食事の前に頼むとメインをしっかり食べられないこともあります。数人で行くときはシェアする方が良いかもしれません。
また、ポルトガル人でも昼食をたっぷり食べた場合、夕食はスープだけにするということもあります。
一般的なカフェでこのくらいのサイズのスープを頼むと、1.5ユーロくらいです。
以前も紹介しましたが、今ではこんな便利な調理家電があるので、家庭でも簡単にスープができますよ。
ざっくり切った野菜をそのまま入れるだけで、温かいスープが出来るので忙しいお母さんの味方です。このページではビンビィで作るレシピも掲載されています。 見た目もきれいなスープがたくさんですね。
https://www.mundodereceitasbimby.com.pt/categorias/sopas
今回は紹介できませんが、カンジャ(Canja)と呼ばれるチキンスープや栗のスープ、かぼちゃスープやネギのスープ、などなど。ポルトガルには美味しいスープがたくさんあります。
寒い冬の夜は、温かいスープでほっこり。
良かったら皆さんもレシピ集を参考に作ってみて下さいね。
https://www.m-portugal.jp/recipe/recipe062.html
それではまた次回!
著者プロフィール
19歳の時にポルトガルに出会いすっかり虜になる。大学卒業後、日本で貿易実務、ロジスティクス、マーケティングの経験を積むが、日本とポルトガルをビジネスで繋ぎたいという気持ちが大きくなり渡ポすることを決意。ポルトガルに1年半留学しMBAを取得。在学中、現地企業やビジネスパーソンとの幅広いコネクションを築く。
現在はポルトガルジュエリーのブランド「フィリグラーナ・コン・アモール(Filigrana com Amor)」を立ち上げ、インポーターとして活動。日本とポルトガルを行き来しながら両国の情報を発信し、人・ビジネス間の交流が活発化するよう邁進中。
Web: http://www.shop.filigranacomamor.com/
www.eleuteriojewels.com
E-mail:s.kiriyama@worldfiligranakk.com
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